継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
「本物と並べても、私には違いが分からなかった。役人が気付かないのも仕方のないことだろう」
「承認を得た当時、お姉様も気付きませんでした。その手にとって見ることは叶わず、すぐに鍵をかけてしまわれてしまったので、その後、調べる者はいませんでした」

 ケリーアデルとしては、この封蝋が本物の証だと思っていたから、割れないようにしまいたかったのだろう。

「本当によく似ています。でも、紋章を飾るバラの葉が少し違うんですよ」

 これを作らされた職人が誰かは分からない。

 おそらく、脅されて作ったたのだろう。その人が、わざと微妙な違いを作ってくれたのかもしれない。偽の印章を作ることへの、せめてもの罪滅ぼしとして。

 よく見なければ気づきもしない、小さな切れ込みのあるバラの葉から、懺悔の声が聞こえてくるようだ。

「バラ……バラの葉?……だって、私はそれを捺せといわれて……」

 困惑した顔でぶつぶつと言い出したケリーアデルが、ゆらりと体を揺らした。
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