継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
 心に冷たい風が吹いているようだった。それに耐えるようにして、ベッドのシーツを握りしめた。
 
「ヴェルヘルミーナ?」
「いいえ、何でもありません……」
「心配はいらない。師団でも調べさせている。難航しているが、必ず見つけ出す」

 ヴィンセント様の大きな手が私を包み込んだ。
 規則正しい心音が耳に届いてくる。それを聞きながら、私はそっと瞳を閉じた。

 能力もちの私を保護するためだったとしても、この優しさは嘘じゃない。そう信じたい……そうでなければ、ケリーアデルの裏にある真相に立ち向かえそうにない。

 怖い、一人で立ち向かうのは怖すぎる。

 ヴィンセント様の腕に指を添え、そのシャツを握りしめながら、最後に見たケリーアデルの姿を思い出す。
 彼女はなにに怯えていたのかしら。もしかして、あの場所に幻惑の魔女がいた……?
 まさか、そんなはずないわよね。

 ヴィンセント様から届く規則正しい心音を聞きながら、私はそっと瞳を閉じた。
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