6月25日、彼は。
そこまで最低にはなれない。

「俺、ずっと家のことで悩んでいて……勉強に追われ続けていたんだよね。父親が厳しい人でほぼ強制のように勉強していて、楽しい時間を最近過ごしたことがなかったんだ。それで、家にいても辛くて教室で課題をしている時に会田さんが来たんだ。なんか久しぶりに一日が楽しく感じて、きっと会田さんとならどんな時間も楽しく過ごせる気がする。会田さんと課題の合間にしたくだらない話が、それくらい純粋に楽しかったんだ」

それは初めて聞いた丹野 珀人の苦しみだった。

珀人はこの話を全て省力して、「私と課題を解いた時間が楽しかったから」と言ったのだろうか。

例え珀人が隠したかったことでも、ずっと好きだった丹野くんが打ち明けてくれた本心を無視出来る人間になりたくなかった。


12月25日に丹野くんは私に告白した。


この出来事は運命は変えられないということを示しているのかもしれない。

私は6月25日に本当に自殺するのだろうか。

それでも今この世界を生きているのは私で、運命を変えられないなんて思いたくなかった。

そして、目の前の丹野くんに誠実に向き合わない人間にもなりたくなかった。

私は深く息を吐いて、前を向く。せめて目を合わせたまま伝えたかった。
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