6月25日、彼は。
「丹野くん、今はまだ返事ができないけれど待っていてくれませんか? あと半年。こんなことを言うのは絶対に間違っているって分かっているけれど、今は丹野くんに真剣に向き合うことが出来ないから答えられない」

珀人と約束した。6月25日までは丹野くんに出来るだけ近づかない、と。
 
私は隣にいる珀人に笑いかけた。

この世界で珀人の姿を見ることが出来るのが……声を聞くことが出来るのが私だけだというのならば、私だけは絶対に珀人を大切にする。
 
私は珀人の手に自分の手を重ねた。

例え通り抜けて触れられないとしても、そばにいることを伝えたかった。

珀人の表情も丹野くんの表情も怖くて、確認することが出来ない。

それでも、この静寂を破ったのは「丹野くん」だった。

「会田さんは冗談でそんなことを言う人じゃないから、きっと何か事情があるんだろうね」

私は顔を上げて、丹野くんの表情を確認する。悲しそうだけれど、諦めた顔ではなかった。

「待つよ、半年。これでも初恋だから」

丹野くんはやっぱり珀人で、珀人はやっぱり丹野くんだと確信するほどに、その時の丹野くんのその表情は珀人と重なって見えた。
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