運命の赤い糸
「おーっす」

 聞き覚えのある声に振り返ると、自転車に乗った北川がいた。

 キーッとブレーキを掛けて自転車を降りると、北川は私と並んで歩き出した。

「おーす。北川にしては帰宅早いじゃん。サッカー部休みなの?」

「野球部が週末試合らしいから、グランド全面貸してあげてんの。夕方から大雨って予報も出てるし、今日は切り上げちゃおうぜって」

 ふーん、なるほど。

 職員室に並んでるトロフィーが、野球部だらけになる訳だ。

 そういう私は文化祭実行委員の会議が終わって、さっき解放されたとこ。北川と帰りが一緒になるなんて、初めてのことかもしれない。


 一年生の時に同じクラスだった北川は、今でも時々LINEを送ってくる。

 『あんたに気があるんじゃないの?』なんて友だちは言うが、とりとめも無い内容ばかりでその可能性は低い。

「なあなあ、お前のクラスの田中と藤野が付き合ってるってホント?」

 ほらね、こんな調子だ。

「なんで? 藤野ちゃんに気でもあるの?」

「いやいや、違えーよ。マックで二人で飯食ってたんだってさ。ほら、駅前の」

「ぷっ。マックで一緒に食べてるだけで、付き合ってるって言われちゃうのヤバくない? それなら一緒に歩いてる私たちだってヤバいじゃん」

 ケラケラと笑う私に、何故か真顔になる北川。

 な、なんだよその表情。

「じゃ、じゃあさ、お前付き合って無い男とも一緒にマック行ったりするわけ?」

「いやあ、マックくらい行くっしょ。行くよ全然」

「行った事あるわけ……? 男と二人で」

「うーん……無いな」

 そう言うと、二人で声を上げて笑った。
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