運命の赤い糸
 私はドリンクだけ、北川はモリモリのセットを買って、マックの二階へと上がった。

「これ使えよ。部活で使ってないから、洗いたて」

 そう言って、北川はタオルを投げてきた。

 顔にタオルがポフッと当たる。北川ん家は、どんな洗剤を使ってるんだろう。私好みの良い匂いがする。

「ありがと、タオル助かる。——北川の分は無いの?」

「お前のあと使うよ。俺が先は嫌だろ?」

「だねー、汗臭そうだもんねー」

「だろー」

 二人でケタケタと笑い合う。


「なんかさ……今日凄くない? 俺がたまたま部活休みになって、お前と会って。で、マックの話してたら、雨降り出してマック来ちゃってるし。——にしても良かったな、俺いなかったらびしょ濡れだったぞ」

「ぷっ。何それ、まるで俺のおかげみたいに」

 北川が真顔で言うので、思わず吹き出してしまった。

「いっ、いや、そういう事を言いたいんじゃなくてさ。ほら……偶然が重なってっていうかさ、運命っていうの? なんかあるじゃん、糸がどうのこうのっての」

「ハハハ、北川が運命とか言っちゃうんだ。——もしかして、あれ? 『運命の赤い糸』とでも言いたいわけ?」

「あ、ああ……それそれ。そういうのも、あるかもなって」

 そう言うと照れ隠しなのか、北川は私からタオルを取り上げ、ゴシゴシと顔を拭きだした。


 北川は運命だなんて言うけど、私が文化祭の実行委員やってたこと知ってるよね?

 もう一つ言っちゃうと、いつもはサッカー部員と一緒に帰宅してるよね?

 フフ。一体、何が運命なんだか。


「なにニヤニヤしてんだよ、変な奴」

「うるさいなあ! タオル返してよ」

 北川から取り返したタオルで、今度は私が顔を拭いた。「それ、俺のだし!」って言ってる、北川を無視して。


 だけどね。今思った——

 『運命の赤い糸』って運命なんかじゃなく、少しずつ二人で結っていくものなのかもしれないなって。

 だって。

 そんな私も、大きな折りたたみ傘が鞄に入ってることを、北川に黙ってるんだから。




〈 運命の赤い糸:了 〉




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