憧れの御曹司と婚約しました。
お淑やかなご令嬢の隠し事
「……日和子さま、今日はこちらのお着物でよろしいでしょうか?」
「えぇ、いいわよ。ありがとう」
小さな頃から付いてくれているセツに着物を提案され、了承した。今日はお茶とお華の稽古の日だから着物だ。濃いピンクに袖や裾に小花が散りばめられ描かれた訪問着に薄いピンク色がベースのぼかしに水色や紫の帯、草木染めのふんわりとした色合いの菖蒲色で四割菱が織られた帯締めをした。
「髪は結いますか?」
「そうね、セツに任せるわ」
「わかりました。では、髪飾りはこちらにしたいのですがどうですか?」
「……いいと思うわ」
セツの手には、私が手芸教室で作ったつまみ細工の髪飾りだった。思い入れがある……いや、とてもあるものだ。とてもニヤケそうになるくらいには、とても好きなものだ。
「ありがとう、セツ」
「いいえ。とても素敵な髪飾りで、うっとりしてしまいます。……出来ました。どうですか?」
「うん、大丈夫よ。ありがとう」
セツにお礼を言うと私は立ち上がり、部屋を出る。