憧れの御曹司と婚約しました。


「おはようございます、お嬢様」
「おはようございます、日和子さま」
 屋敷の廊下を歩くとすれ違うたびに頭を下げられる。それに応えるように「おはよう、みなさん」と微笑み返す――私、雛谷(ひなや)日和子(ひよこ)は自動車メーカーの大手【morita】の子会社である【hinata】の社長の娘だ。いわゆる、社長令嬢である。三人きょうだいの真ん中で兄と弟がいて、兄の陽佑(ようすけ)は現在父に付いて社長補佐をしながら副社長をしていて弟の快斗(かいと)は国立大の大学生で現在は寮ぐらしをしている。
「おはよう、ひよ」
「おはようございます、お兄さま」
「うん。今日も可愛らしいね、似合ってるよ」
「ありがとうございます。今日はお茶の稽古とお華のお稽古に行くので……」
 そう言うと、兄はちょいちょいと手招きする。
「……帰りは連絡する。それで一緒に夕飯も行こう」
「はい。わかりました」
 約束だけ交わして私は家から出ると、専属運転士が車を玄関先につけて待っていたのでそれに乗り込んだ。

 車が走り出してすぐ、スマホの画面を見ると通知の中に【雛谷陽佑】と名前が表示された。
【カフェの特別招待券のURL、送っておくよ。それと今日は貸し切りだから】
 そんなメッセージが来ていて【了解しました】と送ると、帯にスマホをしまった。




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