憧れの御曹司と婚約しました。



 翌日、指定された高級ホテルのラウンジに、私はセツに選んでもらった淡い藤色の訪問着を着て向かった。

 帯には繊細な金糸の刺繍が施され、髪には昨日もこまるCafeで買ったキーホルダーをイメージして作った小さなつまみ細工を挿した。少しでも自分の好きなものを身に着けていれば、気が楽になると思ったのだ。
 ラウンジの窓際の席に案内されると、すでに高梨さんが座っていた。黒のスーツに身を包み、長い指でコーヒーカップを持ちながら、窓の外を眺めている。整った顔立ちと落ち着いた物腰は、さすがmoritaのトップといった雰囲気だった。
「お待たせしました、高梨さん」
 私が軽く会釈すると、彼は微笑んで立ち上がり、席を勧めてくれた。
「日和子さん、久しぶりだね。今日は来てくれてありがとう」
 その声は柔らかかったけど、どこか計算されたような響きがあった。私は少し緊張しながら席に着き、話を始めた。


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