憧れの御曹司と婚約しました。



注文したラテとパンケーキが運ばれてくると、私は思わずスマホを取り出して写真を撮りまくった。ラテの表面には、もこまるのふわふわした顔が泡で描かれていて、飲むのがもったいないくらい。パンケーキはもこまるの形をしていて、ホイップクリームとベリーでデコレーションされている。
「可愛すぎる……! これ、食べるの罪悪感あるわ」
そう言いながらも、フォークを手に取って一口。ふわっとしたパンケーキの甘さとベリーの酸味が絶妙で、幸せな気持ちが口いっぱいに広がった。
「そういえば、ひよ。もこまるって、なんでそんなに好きなんだ?」
お兄さまが不思議そうに尋ねてきた。私は少し照れながら、でも嬉しくて話し始めた。
「きっかけはね、小さい頃にmoritaのイベントで初めて見たの。ふわふわしてて、なんだか癒される見た目で……そのとき、もこまるが子供たちにハグしてて、すっごく優しい雰囲気だったの。それで私もハグしてもらったんだけど、なんだか心がぽかぽかして。それ以来、グッズ集めたり、イベント行ったり、もこまるのことを追いかけてるの」

私はちょっと恥ずかしくなって、そこで言葉を切った。でも本当は、もこまるが私の「隠し事」――お淑やかな社長令嬢としての自分とは違う、自由で無邪気な自分を解放してくれる存在だってことも大きい。普段は着物やお稽古で「雛谷日和子」として振る舞うけど、もこまるの前ではただの「ひよ」でいられる。そんな気持ちは、お兄さまにはまだ内緒だけど。

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