憧れの御曹司と婚約しました。
お見合いと意外な提案


「お父さま、また縁談のお話ですか?」

 私は、雛谷家の広々とした応接室で、父と向き合っていた。父、雛谷孝太郎は、自動車メーカーmoritaの子会社【hinata】の社長であり、いつも穏やかながらもどこか威厳のある表情を浮かべている。今日もその顔で、私にこう切り出した。
「日和子、今回は断れない相手なんだ。moritaの若社長、颯さんから直接話が来た」
「颯さん……? お兄さまの親友の?」
 驚きで声が少し高くなった。颯さん――高梨颯は、【morita】の若き社長で、陽佑お兄さまの大学時代からの親友だ。時折、屋敷にも遊びに来るので顔は知っている。いつもスマートなスーツ姿で、笑顔の裏に鋭い眼光を持った人で、どこか近寄りがたい雰囲気がある。
 まさかその人から縁談だなんて。

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