一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
私たちはラウンジの端の落ち着いた席に腰を下ろした。

磨き上げられたテーブルの上には、聖さんが頼んでくれたコーヒーが運ばれてくる。

湯気の立つカップをそっと口に運び、一口飲むと、ほんのりとした苦味が緊張した心を静めてくれた。

「今日は来てくれてありがとう」

聖さんが微笑みながらそう言った。

その穏やかな声音に、胸が不思議と温かくなる。

「二十五歳だっけ? まだ若いのに、大人っぽく見えるね」

そう言われて、私は小さく笑った。

大人びて見えるのは、父の死後に借金返済に追われ、気づけば必死に働き続けてきたからかもしれない。

無理に背伸びしてきた年月が、顔や仕草に出てしまっているのだろう。

けれど目の前の聖さんも、プロフィールにあった通り三十五歳。

十歳も年上のはずなのに、いわゆる“オジサン感”はまるでなかった。

むしろ洗練されたスーツ姿、整った顔立ち、落ち着いた佇まい。

──すべてが眩しく、同じ人間とは思えない。

イケメンの御曹司。

誰もが憧れる存在が、今、私の目の前に座っている。
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