一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
最初は緊張で声も震えていたけれど、何人もの人に挨拶を重ねるうち、次第に自然な笑顔がこぼれるようになった。

「真帆さんは、普段はどちらでお過ごしなんですか?」

「普通の会社員なんです。今日は緊張してしまって……」

そんな風に正直に答えると、相手の奥様方がくすっと笑い、和やかな空気が広がった。

決して取り繕っているわけではない。

ただの私らしい受け答え。

けれど、それが場を和ませていくのが自分でもわかった。

気づけば、人々の視線が自然とこちらへ集まっていた。

華やかなドレスを着こなした令嬢たちの中で、私だけが少し場違いなはずなのに──なぜか皆、笑顔を返してくれている。

横に立つ聖さんがちらりと私を見下ろす。

その冷徹な瞳の奥に、ほんの一瞬だけ柔らかい光が宿った気がした。

(……よかった。少しは役に立てているのかな)

胸の奥が温かくなり、私はもう一度笑顔を浮かべた。
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