一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
私の答えに、周囲から小さな笑いが漏れた。

緊張で張りつめていた空気が、少しだけやわらいでいく。

その様子を見たお父様は、じっと私を見つめたまま沈黙した。

鋭い眼差しに射抜かれているようで、背筋が凍る。

けれど、やがて小さく息を吐くと、重々しい声を響かせた。

「……さすがは聖が選んだだけのことはあるな。」

言葉とは裏腹に、その目にはまだ懐疑の色が残っていた。

完全に納得したわけではない。

だが、この場でこれ以上問い詰めれば会の雰囲気を壊すと理解しているのだろう。

周囲の人々がほっと息をつき、次々と声を掛けてくれる。

「とても素敵なお嬢さんですね。」

「明るくて、こちらまで気持ちが和みますよ。」

温かな言葉をかけられるたび、胸がじんわりと熱くなる。

私なんかが、この大勢の前で役に立てている──そんな実感が湧いてきた。

横に立つ聖さんは、何も言わず私を見つめていた。

冷ややかな瞳の奥に、一瞬だけ柔らかな光が宿るのを、私は見逃さなかった。
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