一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
会場の視線から離れ、控室のような静かなスペースに入ると、私はようやく深く息を吐いた。

心臓がまだ早鐘のように打ち続けている。

「……緊張しました。」

思わず口にすると、背後から低い声が返ってきた。

「よくやった。」

振り返ると、聖さんがそこに立っていた。

冷徹な眼差しは変わらないのに、言葉の響きだけがどこか柔らかい。

「場を和ませられる人間は貴重だ。父も……内心では認めざるを得なかったはずだ。」

そう言いながら、彼は私の手を取った。

大きな掌の温もりに包まれ、胸がじんと熱くなる。

「契約だから、ただの役目を果たしただけです。」

必死に平静を装ったけれど、声は少し震えていた。

「それでもだ。あんなに堂々と笑っていられるとは思わなかった。……正直、誇らしかった。」

耳まで熱くなった。

契約妻としての役割を褒められただけなのに、まるで本当の妻になったみたいに心が揺れてしまう。

「……ありがとうございます。」

小さくそう答えると、聖さんはふっと口元に笑みを浮かべた。
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