一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
会場を後にし、ホテルの廊下を並んで歩いていると、聖さんがふと足を止めた。

「時間はまだある?」

突然の問いに、胸がどきりとする。

「……はい。」

素直に答えると、彼はゆっくりと微笑んだ。

「お礼にカクテルでも奢るよ。」

低い声が妙に甘く響く。

パーティーで見せた冷徹な表情とは違い、どこか柔らかいその表情に、胸の奥がまた熱くなる。

「そ、そんな……お礼だなんて。」

「君がいたから父を説得できたんだ。十分な理由になる。」

そう言って、エスコートするように私の背中へ軽く手を添える。

自然な仕草に、再び心臓が跳ねた。

「バーはね、屋上にあるんだ。」

エレベーターの扉が開く。

私は聖さんの手に連れられて、そのエレベーターに乗ってしまった。

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