一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
私はカクテルを一気に飲み干し、グラスを置くと背筋を伸ばした。

「じゃあ、私はこれで……」

立ち上がろうとしたその瞬間、聖さんの手が私の手首を軽く包んだ。

「まだ帰したくないな。」

その低い声に、体の内側から何かがきしむように反応する。

思わず目を見開くと、彼は私の顔を覗き込むようにして真剣に言った。

「もっと、俺の妻を続けてほしい。今夜だけでも──嫌かな?」

胸がぎゅっとなる。

さっきまでの強がりや理性が、彼の瞳の前では途端に薄くなるのが自分でもわかった。

「嫌じゃないですけど……」

素直に答えた自分の声は、予想よりも震えていなかった。

聖さんはそれを聞くと、ぽんとポケットに手を入れてルームキーを取り出した。

小さな金属のカードキーが、暗がりの中で光る。

「今夜、俺が泊まる部屋だ。一緒に来ないか?」

選択肢はふたつ。

断ってタクシーに乗る現実、あるいは彼ともう一歩踏み込む非日常。

頭の中では危険と理性がアラームを鳴らしたが、胸の奥では疲れた自分を休ませたいという欲求が囁いた。
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