一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
待ち合わせ場所は、都内でも有名な高級ホテルのラウンジだった。

普段はパンツスタイルばかりの私も、今日は一応スカートを履いてきた。

胸の奥で心臓がうるさく跳ねる。

「いらっしゃいませ」

ドアマンに頭を下げて中へ入ると、広々としたロビーにシャンデリアが輝いている。

場違いな気がして、足がすくみそうだった。

「あの、待ち合わせなのですが……」

受付の女性に声をかけながら、ラウンジの中をきょろきょろと見まわす。

それらしき人影は見当たらない。

時計を見ると、ちょうど待ち合わせの時間。

(まさか、ドタキャン?)

小さくため息をつき、踵を返したそのとき──。

正面から歩いてきたスーツ姿の男性に、思わず肩がぶつかった。

「すみません!」

「こちらこそ」

低く響く声。顔を上げた瞬間、息が止まる。

漆黒のスーツに身を包み、整った顔立ちに鋭い眼差し。
< 8 / 60 >

この作品をシェア

pagetop