Semisweet.
「…は?元、婚約者ですか?」

「ええ、咲間さんを出せと聞かないのですが…。居ないと知ると諦めて帰りました。」


 少し館内を留守にしていたタイミングで来て、その時瑞野も打ち合わせで居なかったらしい。

 タイミングが良かったのか、悪かったのか。


「…分かりました。お手数おかけしてすみません。」


 そんな会話をして先に瑞野に話すべきかどうか悩む。

 話すには間違いないのだけど…、ここで連絡をしても健斗はきっと激昂するのだろう。


「…瑞野。」

「はい。」

「今日帰り、いつもの。」

「はい。」


 業務連絡の様にそんな会話だけしても通じる。

 いつもの、は話したい事がある時に私が使う、居酒屋へのお誘いだ。これは結婚してからもいまだ使っている。

 瑞野はタイピングしながらも私のその発言には耳を傾けていて、短く返事をして会話を終わらせる。

 夫婦になって尚更会社での会話は少ない。

 その代わり家ではかなり話しているから何の文句も無いのだけど。
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