Semisweet.
「さ、仕事しよ。」


 そう言いながら席に戻っていく瑞野の背を見送って、美佳子さんの方に向かう。

 対応で困らせてしまった美佳子さん。それなのに冷静に対応してくれ、本当に頭が上がらない。

 近付いて行く私に美佳子さんが気付くと、いつも通り優しく笑みを向けてくれる。


「美佳子さん。ご迷惑おかけしてすみませんでした。大丈夫でした?」

「ううん、菜穂ちゃんは何も悪くないのよ。というか、瑞野くん格好良いね。」

「……はい。」


 はい、しか言えなかったけど、私はあんたほどの格好良い男を過去にも見た事が無い。

 そんな格好良い匠が私を好きで居てくれるなんてまだ夢なんじゃないかと思ってしまいそうになるけど、凄く幸せだ。


「本当、焦れったい2人ばかり見てたから、やっと最近すっきりした!菜穂ちゃんも前より全然幸せそうだし。」

「美佳子さ~ん!大好きです~!」

「はいはい、フロントで抱き着かない。」

「すみません。」


 急に飛んできた先輩としての正論にさっと背筋を伸ばす。

 他のお客様は幸いいないけどいつ来るか分からないのに、思わず抱き着いてしまった。
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