双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
「みんな、今から王宮に行くよ。今日はあったかい場所で安心して寝ようね。だから、もう泣かないで」
 私が孤児院の子たちを宥めてると、姉がクスクスと笑い出した。

「ちょっと待ってよ。世界一美しいと言われるアリアドネ・シャリレーンとして王宮に行くのに、そんな格好で行くの? せめて身だしなみを整えてから行きなさいな。それからこの指輪もつけた方が、よりアリアドネだと疑われないわ」

 姉がサッと盗聴魔法がかかっているゴールデンベリルの指輪を私の左手の中指に嵌めてきた。
 この指輪も前もって危険なものだとわかってれば、うまく利用できるかもしれない。

「私の方で上手くやるのでご安心ください」

 私は姉に背を向け王宮に急いだ。
 子供たちに、私のことを「アリアドネ様」と呼ぶように言い聞かせる。

「カリンはセルシオ・カルパシーノ国王陛下と結婚するの? 好きでもない男と結婚するなんてやめろよ」

 ませたことを言うマリオが可愛くて仕方がない。

「私はセルシオ・カルパシーノをもうずっと前から愛しているのよ。だから、彼の妻になれるのは私にとって幸せな事なの。マリオ⋯⋯私のことを好きになってくれてありがとね」
 私の言葉に赤くなってマリオが押し黙った。

 王宮への道は孤児院から歩いても1時間もかからない。
 小さな家庭のような王国カルパシーノを、今度こそセルシオと守り抜きたい。

「モンスラダ卿⋯⋯私に言いたい事があったら何でも言ってください。私は、貴方の話を聞きたいと思ってます」
 無言で私たちを先導するモンスラダ卿は不思議な人だ。

 誰もが姉が現れると蕩けるような目で彼女を見ていた。

 そんな中、彼だけは無表情で自分の職務に集中しているように感じた。
(姉が彼に恋をしていたのは嘘でも、もしかしたら一番信頼している人だったのかも⋯⋯)

「アリアドネ様⋯⋯私は、シャリレーン王国の王族に仕える騎士です。私が意見することなど烏滸がましいことは重々承知です」
 彼が無表情で言う言葉に私は思わず吹き出しそうになった。

「言いたいこと沢山ありそうですね。もっと仲良くなって、貴方が沢山私に話をしてくれるように頑張らなきゃいけませんね」
 私の言葉が意外だったのか、無表情の彼の驚いた顔が見られた。

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