双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
アリアドネが発した言葉に耳を疑う。
 島流しとは⋯⋯彼女はよっぽどセルシオ国王が侮辱されたことが許せなかったのだろう。

 そして、ルイス皇子は彼女に褒められた事で恥ずかしいくらいに顔を真っ赤にしている。
 表情管理は帝国の皇子らしく完璧だが、顔が赤くて褒められたのが嬉しくて仕方がないのが隠しきれていない。

「いや、君に怪我がなくて良かった。君に何かあったら僕は狂ってしまってたかもしれない。君が素晴らしい剣技を持っているのは分かったが、君には戦って欲しくない」

 ルイス皇子が震える手で、アリアドネの手を握りしめている。
 厳罰を喰らったルイモン卿もだけでなく、周囲に集まった招待客にもルイス皇子の気持ちはバレてしまうだろう。

 私はそんな風に全く感情を隠すことの出来なくなった彼に抱いたことのない感情を持ち始めていた。
(本当に彼女の事が好きなのね⋯⋯何だか可愛い)

 こんな彼を見たら、私はどうしても考えてしまう。
 替え玉のアリアドネには好感を持っているけれど、その想いは10年以上想い続けたルイス皇子への気持ちを超えることはない。

 替え玉のアリアドネを帝国に連れて行って、本物のアリアドネをセルシオ国王に当てがう。
 神聖力が使えるとはいえ、本物のアリアドネは危険だ。
 彼女の周りには常に死の臭いが漂っている。

 毒を使っているのか暗殺者を使っているのか分からないが、彼女が嫁ぐと周りの人間は次々と死んだ。そして、最後は国まで滅ぶのだ。彼女を帝国に連れて行くのはリスクが高すぎる。

 アリアドネに跪いているルイス皇子が、私をチラリと見てアイコンタクトをとってきた。

 瞬間、今まで感じたことのない程に胸が高まるのを感じた。

 きっと、彼も私と同じことを考えている。そして、麗しい帝国の皇子が自分を頼りにしていることに高揚感を覚えた。

 
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