双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
「殿下! 失礼します! 大きな音がなさいましたが何かございましたか?」

 どうやら扉の外の護衛騎士に感づかれたようだ。
 今、彼らに部屋に入って来られては困る。

「あー! もう殿下、すごい激しいです! 私、壊れちゃう!」

 私はとにかく甘ったるい声をあげながら、ベッドを思いっきりギシギシ音がする程強く揺らしてみた。

 これはメイドのマリナが貸してくれた『メイド、絶倫皇子に夜伽を命じられる』という小説のセリフだ。

 セルシオを想い身につけた教養が、今、役に立っている。

 上手くごまかせたのか、扉の外の騎士が沈黙する。
 
 ふと、セルシオの首が目に入り、私は気持ちを強くした。

 私は彼の為なら何でもできる。
 彼を想うだけで、無敵の女になれるのだ。
(もう1人の生贄をお呼びしなくちゃね)

「アリアお姉様、すぐにいらした方が宜しいわよ。殿下はすっかり私に夢中みたい。お姉様の計画的に大丈夫か、妹として心配なの……」

 私はそっと指輪に囁いた。
 パレーシア帝国と通じていた姉は、今、城内に滞在している可能性が高い。
 
 この城の人間は私の入浴の手伝いをしたメイドまで、私の正体を知っていた。
 姉が帝国と組んで何をするつもりなのかなど今は興味も湧かない。
 私は、ただ世界一愛おしいセルシオを取り戻すだけだ。

「アリアドネ様、困ります。今、ルイス皇子殿下はご就寝中でして……」

 しばらくすると、扉の外で揉める声が聞こえた。
 騎士たちは、私とルイス皇子が真っ最中だと思っているのだろう。

 私はそっと扉を小さく開けて少し俯きながら囁いた。

「殿下が3人で楽しみたいとおっしゃっておりまして、アリアお姉様をお呼びしたのです」
 私の言葉に顔を赤くした騎士は絶句して、姉を部屋の中に通した。

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