双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
 帝国の法律だと皇帝が後継者指名をせずに崩御した場合、第1皇子が自動的に次期皇帝になってしまう。
 クリス第1皇子⋯⋯あの男を世界一の権力者にしてはいけないと、私も強く思った。

 クリス皇子が帝国に連れて行かれてしまうと、聖女は2度と帝国から出してもらえず囲われると言っていた。
 
 本当は私がシャリレーン王国に戻り、王位を継ぎ王国を守りたい。
 しかし、ルイス皇子を次期皇帝にできればこれ以上ない恩を売れる。
 私は帝国へ行く事を了承し、代わりに交換条件を出した。
 
 彼は条件を飲み、自分が皇帝になった暁には私を皇妃にすると約束した。
 私は祖国に戻ることを諦め、遠くから愛するシャリレーン王国を支援しようと決意した。

 ルイス皇子は警戒心も強く、全く女に興味がなさそうだった。
 女に溺れる事がなく、天命を全うしようとする理想の君主だと感じた。

 そして、私はやっと会いたくて堪らなかった愛おしい妹を訪ねた。

 孤児院は想像以上に安っぽい建物だった。

 私は王女とは思えない生活をさせられたカリンが気の毒で胸を締め付けられた。ノックをすると、なかなかお目にかかれない貧乏そうな女がいた。

 見窄らしい髪にボサボサの赤髪で私を迎えたのはミレイアと言う女だった。

「ア、アリアドネ・シャリレーン王女殿下ですか。カリンのお姉様? すみませんカリンを読んで参ります」

 王族を前にして満足に挨拶もできず、声も大き過ぎて不快だ。
 そして、バタバタと走って中に入ったのに一向に戻って来ない。

 私は我慢できなくなって、勝手に中に進入した。

 カリンは一瞬で目を奪われるような天使のような子だった。
 太陽のような輝く瞳に釘付けになり、その清らかな美しさに私は気が付けば涙していた。

< 85 / 137 >

この作品をシェア

pagetop