双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

26.まさか、替え玉?

 ケントリンの報告は驚くべきものだった。
 カリンはセルシオ国王を侮辱されたことで、決闘を申し込み勝利したらしい。
 私は全てを理解した。

 カリンは時を戻している。

 そして、彼女はただの聖女ではなく、創世の聖女の生まれ変わりだ。
 創世の聖女は、最期の時まで奇跡のような神聖力の力を持った神のような存在だとクリス皇子が言っていた。
 
 侮辱されたことを許せず決闘を申し込むだなんて、そこに慈悲の心は感じない。
 その上、孤児院育ちの彼女がいくら何でもそこまでの剣術を身につけるのは不可能だ。

「ケントリン、カリンの剣術はどの国の騎士団のものに似ていた?」
 受け継がれている剣術には特徴がある。

 それで、時を戻す前のカリンの行動がわかるかもしれない。
 神にも等しい彼女が、時を戻さなければならない事態があったのだ。

 生贄はおそらくルイス皇子だろう。

 ルイス皇子も、時を戻すことに賛同したと言うことだ。
 だとしたら、世界規模の大戦や感染症など時を戻さなければならなかった事態があったに違いない。

 術師であるカリンに何があったか尋ねたいが、内容が内容だけに手紙を送ったり、伝言を頼むのも危険だ。
 その上、彼女自身が私に何の相談もしないと言うことは、悲しいが私の協力は必要としていないと言うことだろう。

「剣術って、種類があるんでしょうか?」
 私はケントリンの恐ろしさを知った。

 彼は今までの3カ国で何を見て来たのだろう。
 同じ騎士として、稽古に入れてもらう社交性はなくても技術は盗もうと必死に観察したりするのが普通だ。

「これからは良く観察して見て見なさい。ちなみにセルシオ・カルパシーノは一切の防御のない攻撃的な剣を振るうことで有名だけど、これはエウレパ王国の王宮剣術よ」

「それです。カリン様は攻撃しかしていませんでした。それなのに無傷で、相手の首を途中まで切ってました。でも、神聖力で一瞬で治してましたよ」 
(首? 相手は帝国の騎士なのに何て危なっかしいことを⋯⋯)

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