最強で、最孤
プロローグ
竹刀が空気を切る音が、静かな道場に響き渡る。

剣道場で、黒瀬瑠那はひとり、繰り返し素振りを続けていた。部員は、いるはずなのに。

「......私だけ、なんでこんなに孤独なんだろう」

剣道部は形だけの活動。部員たちは、自分たちは精一杯努力しているとでも思っているのか、「優勝しちゃうぜ！」と言っている。しかし、やる気は一切感じられなかった。

副部長である私が、なぜこんな状況に甘んじなければならないのか。

中２の中総体では、団体戦は初戦敗退。個人戦も、誰一人として県大会に行けなかった。

でも、その次の新人戦では、個人戦で私だけが県大会に進み、ベスト８まで上り詰めた。

それでも、希望が見えたのは私の心だけ。団体戦は相変わらずの初戦敗退。努力もしないのに泣いていた姿は、とても醜かった。

だから、私は部活から離れることを決意した。

「最後の大会は、自分の力だけで勝ちに行く——」

春の柔らかな陽射しが窓から差し込み、瑠那の瞳は、静かに、激しく燃えていた。
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