最強で、最孤

道場の窓から差し込む午後の日差しは、どこか優しいのに、剣道部の空気はその何倍も重かった。

加藤が声を張り上げてみるが、部員たちの動きは鈍く、掛け声は響かない。

「もっと気合入れて！！！」

声が裏返ったのは、焦りの証だった。

部員たちは皆、今さら、瑠那がいない現実に押しつぶされそうになっている。

「......黒瀬先輩が戻れば、変われるのかな」

休憩時間、小声で呟いたのは、白石だ。

加藤はその言葉を聞き流すことができなかった。

「私たちで変えなきゃいけないの。たとえ、瑠那がいなくても。」

しかし、誰もその言葉に力強く頷くことはできなかった。