最強で、最孤
「......は?ふざけないでよ」
静かに、でも鋭く吐き捨てた。
「『本気で』? 今さら? あんたたちが? 本気で勝ちたいなんて思ってるなら、なんで今まであんな剣道ごっこなんてしてきたの?」
その言葉に、佐伯が口を開こうとしたが、瑠那の怒りは止まらなかった。
「小さな掛け声だけ出して、形だけの素振りして、負けたときだけ『悔しい〜』ってメソメソ泣いて。......それ、努力してこなかった人たちが言っていいセリフなの?」
声が震えていた。ただの怒りだけじゃない。悔しさと、悲しさと、孤独と。
全部が胸の奥から溢れ出していた。
「私は......ずっと見てた。誰よりも練習して、誰よりも勝ちたくて、それでも、私が強くなるだけじゃ、団体戦は初戦敗退のままだった。でも、個人戦でベスト8入ったときに、少しでも空気が変わって、みんな一生懸命練習する気になってくれればいいなと思ってた。だけど!!!剣道部の雰囲気、稽古、態度は何一つ変わらなかった!!!!」
加藤が唇を噛みながら言った。
「ごめん......。それは、部長である私の責任。私が——」
「違うよ、詩織。」
瑠那は遮った。喋り方は強かったが、その奥に切なさが隠れていた。
「これは、私の責任。あんたたちが全員、“頑張ってるつもり”だったから、私だけがどんどん浮いていった。」
目が潤んでいた。視界が滲む。でも、泣きたくなかった。泣いたら、部員たちと同じになってしまうから。ただの敗北みたいで、悔しいから。
「だから、部活に行かなくなって、外で稽古して......それでも、ずっと迷ってた。副部長として部活に行かなくて良いのか。私は間違ってるんじゃないかって」
その声には、本音が染み込んでいた。
「でもね、一つだけ言えることがある」
瑠那は、加藤と佐伯とゆっくり目を合わせた。
「私は、強くなりたかったの。心から、勝ちたかった。ただ、それだけだったの」
無音が響く。
すると、加藤がゆっくりと頭を下げた。
「——瑠那。私達は、変わりたい。今さらかもしれない。でも、瑠那のその“本気”に触れてしまったから。もう背を向けることはできない」
佐伯も、小さく頷いた。
「瑠那の努力を、無駄にしたくない。なかったことにしたくない。だから、一緒に......勝ちたいんだ」
瑠那はしばらく無言だった。
部屋の窓の外では、風が吹いていた。夏の手前の、夜の風。
やがて彼女は、静かに頷いた。
「ほんとに『今さら』だよ。...遅いんだよ。」
瑠那の目には、耐えきれないほどの涙があった。
「私は、簡単にはその“本気”信じないよ。だから、私に示して。その“本気”。私もやるだけやってみるから」
「...ありがとう」
加藤のその一言は、小さく、でも確かに熱いものだった。
この夜、ようやく「孤独」が「チーム」へと、一歩だけ近づいた。
静かに、でも鋭く吐き捨てた。
「『本気で』? 今さら? あんたたちが? 本気で勝ちたいなんて思ってるなら、なんで今まであんな剣道ごっこなんてしてきたの?」
その言葉に、佐伯が口を開こうとしたが、瑠那の怒りは止まらなかった。
「小さな掛け声だけ出して、形だけの素振りして、負けたときだけ『悔しい〜』ってメソメソ泣いて。......それ、努力してこなかった人たちが言っていいセリフなの?」
声が震えていた。ただの怒りだけじゃない。悔しさと、悲しさと、孤独と。
全部が胸の奥から溢れ出していた。
「私は......ずっと見てた。誰よりも練習して、誰よりも勝ちたくて、それでも、私が強くなるだけじゃ、団体戦は初戦敗退のままだった。でも、個人戦でベスト8入ったときに、少しでも空気が変わって、みんな一生懸命練習する気になってくれればいいなと思ってた。だけど!!!剣道部の雰囲気、稽古、態度は何一つ変わらなかった!!!!」
加藤が唇を噛みながら言った。
「ごめん......。それは、部長である私の責任。私が——」
「違うよ、詩織。」
瑠那は遮った。喋り方は強かったが、その奥に切なさが隠れていた。
「これは、私の責任。あんたたちが全員、“頑張ってるつもり”だったから、私だけがどんどん浮いていった。」
目が潤んでいた。視界が滲む。でも、泣きたくなかった。泣いたら、部員たちと同じになってしまうから。ただの敗北みたいで、悔しいから。
「だから、部活に行かなくなって、外で稽古して......それでも、ずっと迷ってた。副部長として部活に行かなくて良いのか。私は間違ってるんじゃないかって」
その声には、本音が染み込んでいた。
「でもね、一つだけ言えることがある」
瑠那は、加藤と佐伯とゆっくり目を合わせた。
「私は、強くなりたかったの。心から、勝ちたかった。ただ、それだけだったの」
無音が響く。
すると、加藤がゆっくりと頭を下げた。
「——瑠那。私達は、変わりたい。今さらかもしれない。でも、瑠那のその“本気”に触れてしまったから。もう背を向けることはできない」
佐伯も、小さく頷いた。
「瑠那の努力を、無駄にしたくない。なかったことにしたくない。だから、一緒に......勝ちたいんだ」
瑠那はしばらく無言だった。
部屋の窓の外では、風が吹いていた。夏の手前の、夜の風。
やがて彼女は、静かに頷いた。
「ほんとに『今さら』だよ。...遅いんだよ。」
瑠那の目には、耐えきれないほどの涙があった。
「私は、簡単にはその“本気”信じないよ。だから、私に示して。その“本気”。私もやるだけやってみるから」
「...ありがとう」
加藤のその一言は、小さく、でも確かに熱いものだった。
この夜、ようやく「孤独」が「チーム」へと、一歩だけ近づいた。