最強で、最孤


選手控室に向かう途中で、瑠那はふと振り返る。

観客席の端に、母の姿があった。

控えめに拍手をして、笑って見守ってくれている。

(ありがとう)

そう思いながら母を見つめた。



剣道場に入ると、もう加藤、佐伯、大島、三宅が整列していた。

「お、来た!遅いよ、大将」

加藤が軽く笑って笑う。

「早すぎなんだよ、あんたたちが」

瑠那も笑い返す。その笑顔には、もうギスギスした空気はなかった。

顧問が、バインダー片手に試合のオーダーを読み上げる。

「先鋒:加藤 次鋒:佐伯 中堅:大島 副将:三宅 大将:黒瀬
 3年生は最後の試合になるかもしれない。気合い入れて頑張ってこい!!」

「はいっ!!!」

その瞬間、空気が一段と締まった。

チーム全員の視線が、瑠那に集まる。

けれど彼女は、いつも通り静かに、ただ一言。

「......絶対、この“チーム”で勝つ」

その言葉に、加藤が笑顔で応える。

「大将は任せたぞ、瑠那。わたしたちがしっかり流れ作るから」

「でも最後は、あんたが全部持ってけよ」

佐伯が肩を叩いて笑った。
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