最強で、最孤


応援席を見ると、白石の姿も見えた。

剣道部の手ぬぐいを握りしめ、じっとこちらを見つめている。

昨日、最後の最後でぶつかり合った、最高の後輩、白石。

その視線はもう敵意ではなく、“託す”ような真っ直ぐなまなざしだった。

(私が、ちゃんと受け取る)

瑠那は、小さく頷いた。



開会式が終わり、審判長の声が体育館全体に響き渡る。

「団体戦 第一試合、開始10分前!」

体育館が一気に静まり返る。

床の音、竹刀を持つ手の震え、鼓動——

これらすべてが、“決戦”への前触れだった。

(最後の中総体団体戦、後悔はしない。絶対に。)

瑠那は、竹刀を強く握りしめた。
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