最強で、最孤
正面に立つのは、市内でも有数の強者だった。

(ここで勝たないと、チームはきれいに勝ったとは言えない!)

(仲間につないでもらったんだ...。大将の底力を見せないと!!)

観客席からの、大きな応援。
でも、今は耳を傾けてはいけない。目の前の試合に集中する。



先に動いたのは相手だった。

巧みに足を使い、間合いを詰めてくる。

(速い——でも、見えてる)

瑠那は冷静だった。

この数ヶ月、外部の道場で鍛え続けてきた。

このスピードは、もうとっくに慣れている。

そして、瑠那と相手は同時に面を打った。

「面あり!」

旗が上がったのは、瑠那の方だった。

(一本......取った!)

だけど、油断はしない。

構え直して、息を整える。

「二本目!」

再び相手が動く。間合いを詰め——

だが、その動きに、迷いが見えた。

(チャンス!!)

瑠那は、大きく踏み込んだ。強く、速く、まっすぐに。

「メンッッッ!!!!」

竹刀が相手の面を確実に捉えた瞬間、

「面あり!」

「勝負あり!」

主審の声と同時に、拍手と歓声が湧き上がった。



静かに、竹刀を下ろし、一礼する。

待機場所に戻ると、仲間たちが笑顔で迎えてくれた。

「ナイス締め、大将!」

「さすがだね」

「最高だった!」

加藤がグータッチを差し出す。

瑠那はそれを、小さく笑って受けた。

「......ありがとう」

その声は、これまでとは違っていた。

自分を閉ざしていたあの頃の声ではなく、

誰かと一緒に戦った“自分”の声だった。



団体戦、一回戦——勝利。

この勝ちが、ただの試合の結果じゃないことを、

瑠那は誰よりも知っていた。
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