最強で、最孤


時間が過ぎても、一本は取れなかった。

何回延長しただろう。

どちらも決定打を打てないまま、試合は続く。

息が切れ、司会が揺れる。

でも——ここまで来たら、勝つしかない。

瑠那の視界の中に、観客席が入った。

母がいた。
そして、その隣に加藤がいた。

2人とも、口を開かず、ただ静かに瑠那を見つめていた。

その目は、何よりも強いエールだった。

(みんなの想いを、勝ちに変える!)

次の瞬間、我慢しきれなくなった相手が出てきた。

(来る......!)

それを、この時を、ずっと待っていた。

瑠那は、迷わず踏み込んだ。

「メンッッ!!」

竹刀が、相手の面を正確にとらえた。

「面あり!」

主審の声が響いた。

会場が、一瞬にして大きな拍手と歓声で包まれた。

「勝負あり!」

竹刀を下ろし、深く礼をする。

(勝った......
 私は、やっと...やっとここまで来た)
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