最強で、最孤


試合が終わっても、しばらく立ち上がれなかった。

息が切れて、腕が痺れて、膝が震えていた。

でも、その全部が、心地よいものだった。

(剣道って、こんなにも楽しくて、熱くなれるんだ)



観客席を見上げると、加藤が...涙を拭いながら、笑っていた。

母も、拍手をしながら、うんうんと、うなずいていた。



表彰式では、瑠那の名前が堂々と響き渡り、拍手喝采だった。

大きなトロフィーとメダル、そして「優勝」と大きく書かれた賞状をもらった。



瑠那は、片付けをして、体育館に別れを告げた。

(この先に、何が待っているかはわからない。でも、私はきっと、剣道を続ける。
 この道を——もう、1人で歩いてるんじゃないから)



会場の出口、扉の外には、新しい風が吹いていた。
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