最強で、最孤


道場を出ると、秋風が頬を撫でた。

でも、それはどこか春の風に似ていた。

風の中で目を閉じると、道場で繰り返した素振りの感覚、

大会の張り詰めた空気、

仲間の声、

母の笑顔、——すべてが、静かに蘇る。


瑠那は、一歩を踏み出した。

この先、また孤独を感じる日が戻ってくるかもしれない。

でも、きっと大丈夫。

もう私には、仲間、剣道、未来がある。

(私は止まらない。前に進み続ける)

紅葉の葉が、風を舞った。

その中を、黒瀬瑠那という剣士が、前を向いて歩いていく。



——おわり。
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