SWAN航空幸せ行きスピンオフ!〜雷のち晴れ〜
理人
……沖縄から東京へ向かう出発前の機内ブリーフィング。飛行機の機長として乗り込む予定の一柳理人は副機長の報告を受けて難しい顔をした。
「まずいな」
二、三日前から冬型の気圧配置によって引き起こされる寒冷前線が日本海沿岸まで降りてきていたのだが、それがどんどん関東まで近づいてきているという。
「関東に到着する頃に雷雲の中を突っ切るかもしれない」
「はい」
副機長の顔が引きつっており、CA達も同様である。
「状況によってはATB (Air Turn Back:エア・ターンバック=出発地に引き返す)か、divert(ダイバード=目的地外着陸)になるかもしれない」
その後、会社からの通達により欠航はしないものの、条件付き運航となった。
「到着地の東京国際空港近辺に雷雲が発生しております。欠航ではありませんが、状況によっては離陸前の空港に戻るか、または近辺の空港に緊急着陸の可能性がございます」
空港内にアナウンスが流れた途端、一斉に搭乗予定客達は不満げな声を漏らした。
払い戻しを提案するも、沖縄を出発して東京に向かわなければならないらしく、ほとんどキャンセル客はいない。かえって、次の便から少しでも早く到着しようとする客で、満席となってしまった。
ドアが閉められ、オーバーヘッド・コンパートメント(頭上の荷物入れ)が全て閉まり、客室乗務員も所定の席に着座したのを見計らい、理人は挨拶を行う。雲が厚いので機体が揺れることが想像されること。そしてシートベルト着用のランプが消えるまで外さないように、という内容だ。
多少風が強くて雲が厚いが、順調な巡航となった。
が。もう少しで東京国際空港が見えるという距離になって。
「まずい」
理人の唇が勝手に言葉をつぶやく。副機長も青ざめた。二人の前には雷雲が時折稲妻を走らせている。
「ドンピシャですね」
東京国際空港の方向そのものだった。
管制塔から通信が入った。
「離陸予定の飛行機が飛べず、着陸のスペースがない。燃料搭載量の少ない順に下すから、上空で待機してほしい」
レーダーには何機もの機影が映っている。
理人はチーフパーサーを操縦室へ呼び出し、ことの次第を伝えた。理人は副操縦士に燃料の積載量と近くの空港の空き状況を確認させる。チーフパーサーが席に戻ったタイミングで理人は再びアナウンスを入れた。
「まずいな」
二、三日前から冬型の気圧配置によって引き起こされる寒冷前線が日本海沿岸まで降りてきていたのだが、それがどんどん関東まで近づいてきているという。
「関東に到着する頃に雷雲の中を突っ切るかもしれない」
「はい」
副機長の顔が引きつっており、CA達も同様である。
「状況によってはATB (Air Turn Back:エア・ターンバック=出発地に引き返す)か、divert(ダイバード=目的地外着陸)になるかもしれない」
その後、会社からの通達により欠航はしないものの、条件付き運航となった。
「到着地の東京国際空港近辺に雷雲が発生しております。欠航ではありませんが、状況によっては離陸前の空港に戻るか、または近辺の空港に緊急着陸の可能性がございます」
空港内にアナウンスが流れた途端、一斉に搭乗予定客達は不満げな声を漏らした。
払い戻しを提案するも、沖縄を出発して東京に向かわなければならないらしく、ほとんどキャンセル客はいない。かえって、次の便から少しでも早く到着しようとする客で、満席となってしまった。
ドアが閉められ、オーバーヘッド・コンパートメント(頭上の荷物入れ)が全て閉まり、客室乗務員も所定の席に着座したのを見計らい、理人は挨拶を行う。雲が厚いので機体が揺れることが想像されること。そしてシートベルト着用のランプが消えるまで外さないように、という内容だ。
多少風が強くて雲が厚いが、順調な巡航となった。
が。もう少しで東京国際空港が見えるという距離になって。
「まずい」
理人の唇が勝手に言葉をつぶやく。副機長も青ざめた。二人の前には雷雲が時折稲妻を走らせている。
「ドンピシャですね」
東京国際空港の方向そのものだった。
管制塔から通信が入った。
「離陸予定の飛行機が飛べず、着陸のスペースがない。燃料搭載量の少ない順に下すから、上空で待機してほしい」
レーダーには何機もの機影が映っている。
理人はチーフパーサーを操縦室へ呼び出し、ことの次第を伝えた。理人は副操縦士に燃料の積載量と近くの空港の空き状況を確認させる。チーフパーサーが席に戻ったタイミングで理人は再びアナウンスを入れた。