SWAN航空幸せ行きスピンオフ!〜雷のち晴れ〜
到着
人は飛行機に比べると、小さい。そのためマーシャラーはコクピットにいるパイロットへの視認性を高めるため、マーシャリングカーに乗る。
「消防車のはしご車……よりは、電柱に籠で近づいて作業する車に近いかな」
希空は指定された場所に車を停めると、油圧式作業台に立ち、上昇させていく。濡れた滑走路にほかの光が反射して見えづらいが、すでに滑走路はパイロットが視認できるよう灯されている。
「落ち石や落雷でライトが一個も破損しなかったって奇跡だよね」
希空は白や青、赤のライトを見ながら呟く。
灯りの一つ一つが、夫を自分に誘ってくれるのだと思うと、いやがうえにも高揚してくる。
やがて進入してくるにあたって最適な角度になった飛行機の認識灯が見えてきた。
「理人さん」
慕情で飛行機を見つめていた瞳が冷静に切り替わる。希空は黄色のライトスティックを握り直した。
やがて、飛行機が愛称の通りふわりと降り立つ。
そのままスピードを殺すため助走し、止まった。
滑走路は次の飛行機が降り立つべくスタンバイしているので、すみやかに空ける必要がある。
理人の乗った飛行機は希空の誘導に従い、グラハンのスタッフが待っているこの場所に駐機するべく動き出した。
ゆっくりと理人の乗った飛行機が機首を希空に向けてくる。
普段と変わらなさそうな安定した運転に、涙ぐみそうになる。しかし、ここで誤った指示を出してはならない。理人が守った搭乗客達をきちんと迎え入れるのが希空の仕事だ。
マーシャラーには何通りかの動作がある。
「私を見て」
希空は囁く。
【注目せよ。この場所に誘導を開始する】の意味として、点灯したライトスティックを握っている両腕を上げた。
疲れているだろうに、理人は完璧だった。
飛行機がマーシャラーの意図する進入経路よりずれていると「右へ」「左へ」と指示をすることがあるが、彼はまっすぐに進んでくる。私の旦那様はなんて完璧なんだろうと、誇らしさが胸に広がる。
【そのまま直進せよ】
両腕の肘から先を、内側に曲げて伸ばしては何度も振る。
【速度を落とせ】
両腕を上下に振る。
振り方でスピードも指示しているので、一定速度になるよう細心の注意を払う。
そして。
【停止せよ】
両腕をゆっくりと頭上に向けてあげていき、交差させた。
その瞬間、コクピットのパイロットと目が合ったような気がする。
「私だよ、理人さん」
希空はかすかに微笑む。
【エンジンを切れ】
左手を首に当て、水平に戻して首を切る動作をする。物騒だなと思うが、「これが一番わかりやすい」というパイロットもいるらしい。
やがて飛行機のエンジンの音が止んだ。ふ、と静けさが戻る。
けれど搭乗客にとってはここからだ。
【降着装置に輪止めを施せ】
これはグラハンのスタッフに向けた動作だ。 下に開いた両腕を、拳握って腰に当てる。
ここまでして初めて、搭乗客を降機させる準備が始められる。
タラップ車が接続され、搭乗客が降りていく中。
希空はコクピットに座る理人をじっと見つめていた。
「消防車のはしご車……よりは、電柱に籠で近づいて作業する車に近いかな」
希空は指定された場所に車を停めると、油圧式作業台に立ち、上昇させていく。濡れた滑走路にほかの光が反射して見えづらいが、すでに滑走路はパイロットが視認できるよう灯されている。
「落ち石や落雷でライトが一個も破損しなかったって奇跡だよね」
希空は白や青、赤のライトを見ながら呟く。
灯りの一つ一つが、夫を自分に誘ってくれるのだと思うと、いやがうえにも高揚してくる。
やがて進入してくるにあたって最適な角度になった飛行機の認識灯が見えてきた。
「理人さん」
慕情で飛行機を見つめていた瞳が冷静に切り替わる。希空は黄色のライトスティックを握り直した。
やがて、飛行機が愛称の通りふわりと降り立つ。
そのままスピードを殺すため助走し、止まった。
滑走路は次の飛行機が降り立つべくスタンバイしているので、すみやかに空ける必要がある。
理人の乗った飛行機は希空の誘導に従い、グラハンのスタッフが待っているこの場所に駐機するべく動き出した。
ゆっくりと理人の乗った飛行機が機首を希空に向けてくる。
普段と変わらなさそうな安定した運転に、涙ぐみそうになる。しかし、ここで誤った指示を出してはならない。理人が守った搭乗客達をきちんと迎え入れるのが希空の仕事だ。
マーシャラーには何通りかの動作がある。
「私を見て」
希空は囁く。
【注目せよ。この場所に誘導を開始する】の意味として、点灯したライトスティックを握っている両腕を上げた。
疲れているだろうに、理人は完璧だった。
飛行機がマーシャラーの意図する進入経路よりずれていると「右へ」「左へ」と指示をすることがあるが、彼はまっすぐに進んでくる。私の旦那様はなんて完璧なんだろうと、誇らしさが胸に広がる。
【そのまま直進せよ】
両腕の肘から先を、内側に曲げて伸ばしては何度も振る。
【速度を落とせ】
両腕を上下に振る。
振り方でスピードも指示しているので、一定速度になるよう細心の注意を払う。
そして。
【停止せよ】
両腕をゆっくりと頭上に向けてあげていき、交差させた。
その瞬間、コクピットのパイロットと目が合ったような気がする。
「私だよ、理人さん」
希空はかすかに微笑む。
【エンジンを切れ】
左手を首に当て、水平に戻して首を切る動作をする。物騒だなと思うが、「これが一番わかりやすい」というパイロットもいるらしい。
やがて飛行機のエンジンの音が止んだ。ふ、と静けさが戻る。
けれど搭乗客にとってはここからだ。
【降着装置に輪止めを施せ】
これはグラハンのスタッフに向けた動作だ。 下に開いた両腕を、拳握って腰に当てる。
ここまでして初めて、搭乗客を降機させる準備が始められる。
タラップ車が接続され、搭乗客が降りていく中。
希空はコクピットに座る理人をじっと見つめていた。