SWAN航空幸せ行きスピンオフ!〜雷のち晴れ〜
再会
ホテルのドアを開けた途端、夫がにこやかに出迎えてくれる。
理人の髪が濡れていたので、希空は一瞬考えた。雨、汗、シャワーどれだろう? 五感で確認する前に、両手を広げられた。
おかえり」
まるで家での出迎えのような言葉に、希空の緊張が一気になくなる。
満面の笑みを浮かべた希空は理人に抱きついた。彼も抱きしめ返してくれる。
「ただいま!」
夫の胸に顔を埋めながら、希空は囁く。
「理人さんが無事でよかった……」
飛行機でなにか起これば、責任は理人にのしかかってくる。重圧を担う彼を支えなければと思うものの、無事に降りてくれたことがどうしようもなく嬉しい。
「お疲れ様でした。無事に帰ってきてくれてありがとう」
理人の腕の中から顔をあげ、涙を溜めながらも微笑んで見せる。
一瞬、理人が顔を歪めたが、希空は気づかない。
「希空」
理人が性急な仕草でキスを求めてきた。
とはいえ、予想していなかったわけではない。むしろ自分こそ、彼にむしゃぶりつきたかった。
「ん……」
希空はうっとりとした表情で、理人からのキスを受け入れる。彼の手が自分の後頭部と腰をがっしり掴んでいる。希空も負けじと夫の短い髪の中に指を入れ、掻き乱す。
キスだけではおさまらない。
大好きな人に体中をまさぐられ、体から力が抜ける。かくりと膝が崩れたが、夫が抱きかかえてくれた。
ヒョイと持ち上げられる。そのまま部屋の奥に連れていかれそうになったので、希空は慌てた。
「理人さん、あのっ。今日は特にドロドロで」
本音を言えば、このままベッドに運ばれて押し倒されたい。けれど、そう出来ない事情がある。今日の自分は雨水と粉塵混じりのオイルに塗れ、普段より汚れている。このまま抱かれるのは女として許せない。
大好きな人には最高に綺麗な自分を「食べて」ほしい。しかし理人はわかってくれない。
「却下」
今までのパターンだと断られる確率は高いなと思ってはいた。正直、そこまで自分に飢えて欲してくれる理人が嬉しい。
「でも……!」
仮でシャワーを浴びた後、また現場に出たので気持ち悪さはMAXである。シャワーを浴びたい、とお願いするつもりでいた。
「我慢出来ない」
ちらりと流し目をよこされて、う、と詰まる。
「それは私もです! ……けれど」
もじもじしている希空を前に、理人は考え直してくれたようだった。
「わかった」
夫の了承に、希空はほっとした。すると、にぃぃぃっこりと微笑みを浮かべてくるではないか。
途端、希空は警戒した。
こ、これ。言うことを聞かされるやつ……!
夫はなにを言い出すのか。
未だ縦抱きにされたままの希空は、どきどきしながら彼を見下ろす。理人が大好きな自分は、彼に逆らえない。夫の言うことを聞いてしまうのは確実だけど、なにを言われるのだろう。
「じゃあ、一緒にシャワーを浴びよう」
希空はキョトンとする。
「理人さん、もう浴びたんじゃ……?」
彼の体から、ほのかにソープの香りが漂っているのに?
「のーあ」
夫が妻を説得しにかかる。
「俺が希空と一緒に風呂に入れる機会を逃さないわけないだろう?」
色っぽい声を耳穴に吹き込まれ、ぞくりとしたものが体の中を駆け巡る。
「今日の飛行、大変だったんだ」
そうだよね。心の中で相槌をうちつつ、理人の口調が甘えていることに気づく。自分はいつも夫の、大空のような愛に甘やかされている。たまには自分が疲れている彼を癒してあげたい。希空の逡巡が分かっているかのように理人が囁いてくる。
「 ご褒美がほしい」
「……なにを?」
問いながら、希空には理人の答えがわかっているような、気がした。
理人の髪が濡れていたので、希空は一瞬考えた。雨、汗、シャワーどれだろう? 五感で確認する前に、両手を広げられた。
おかえり」
まるで家での出迎えのような言葉に、希空の緊張が一気になくなる。
満面の笑みを浮かべた希空は理人に抱きついた。彼も抱きしめ返してくれる。
「ただいま!」
夫の胸に顔を埋めながら、希空は囁く。
「理人さんが無事でよかった……」
飛行機でなにか起これば、責任は理人にのしかかってくる。重圧を担う彼を支えなければと思うものの、無事に降りてくれたことがどうしようもなく嬉しい。
「お疲れ様でした。無事に帰ってきてくれてありがとう」
理人の腕の中から顔をあげ、涙を溜めながらも微笑んで見せる。
一瞬、理人が顔を歪めたが、希空は気づかない。
「希空」
理人が性急な仕草でキスを求めてきた。
とはいえ、予想していなかったわけではない。むしろ自分こそ、彼にむしゃぶりつきたかった。
「ん……」
希空はうっとりとした表情で、理人からのキスを受け入れる。彼の手が自分の後頭部と腰をがっしり掴んでいる。希空も負けじと夫の短い髪の中に指を入れ、掻き乱す。
キスだけではおさまらない。
大好きな人に体中をまさぐられ、体から力が抜ける。かくりと膝が崩れたが、夫が抱きかかえてくれた。
ヒョイと持ち上げられる。そのまま部屋の奥に連れていかれそうになったので、希空は慌てた。
「理人さん、あのっ。今日は特にドロドロで」
本音を言えば、このままベッドに運ばれて押し倒されたい。けれど、そう出来ない事情がある。今日の自分は雨水と粉塵混じりのオイルに塗れ、普段より汚れている。このまま抱かれるのは女として許せない。
大好きな人には最高に綺麗な自分を「食べて」ほしい。しかし理人はわかってくれない。
「却下」
今までのパターンだと断られる確率は高いなと思ってはいた。正直、そこまで自分に飢えて欲してくれる理人が嬉しい。
「でも……!」
仮でシャワーを浴びた後、また現場に出たので気持ち悪さはMAXである。シャワーを浴びたい、とお願いするつもりでいた。
「我慢出来ない」
ちらりと流し目をよこされて、う、と詰まる。
「それは私もです! ……けれど」
もじもじしている希空を前に、理人は考え直してくれたようだった。
「わかった」
夫の了承に、希空はほっとした。すると、にぃぃぃっこりと微笑みを浮かべてくるではないか。
途端、希空は警戒した。
こ、これ。言うことを聞かされるやつ……!
夫はなにを言い出すのか。
未だ縦抱きにされたままの希空は、どきどきしながら彼を見下ろす。理人が大好きな自分は、彼に逆らえない。夫の言うことを聞いてしまうのは確実だけど、なにを言われるのだろう。
「じゃあ、一緒にシャワーを浴びよう」
希空はキョトンとする。
「理人さん、もう浴びたんじゃ……?」
彼の体から、ほのかにソープの香りが漂っているのに?
「のーあ」
夫が妻を説得しにかかる。
「俺が希空と一緒に風呂に入れる機会を逃さないわけないだろう?」
色っぽい声を耳穴に吹き込まれ、ぞくりとしたものが体の中を駆け巡る。
「今日の飛行、大変だったんだ」
そうだよね。心の中で相槌をうちつつ、理人の口調が甘えていることに気づく。自分はいつも夫の、大空のような愛に甘やかされている。たまには自分が疲れている彼を癒してあげたい。希空の逡巡が分かっているかのように理人が囁いてくる。
「 ご褒美がほしい」
「……なにを?」
問いながら、希空には理人の答えがわかっているような、気がした。