キスは契約違反です！！ ～年下御曹司と期間限定ルームシェア～

　秋の室温のさなかで起き上がる。身体から毛布が滑り落ちたら、少し肌寒い。コットン素材の薄手のルームウェアの上から、室内用のニットカーディガンを羽織った。

　そうして、ふわふわのスリッパにつま先を差し込んで、立ち上がった。

　リビングに行く前に、洗面所に寄って顔を洗う。ついでに、簡単に寝癖も整えて、ぴかぴかの鏡の前で身だしなみを確認する。

　まあ、これなら大丈夫――とある程度納得がいったところで、ようやくリビングへ向かった。

　シックなダークグレーの片開きドアをあけると、コーヒーの香りがふわりと漂ってくる。

「おはようございます」

　キッチンから、如月くんの柔らかな声が届く。シャツとスラックスに着替えているけれど、ネクタイはまだで、ふわふわの髪もラフなまま。

　コーヒーの香りの中へ、一歩踏み込んだ私は、

「おはよう」

　と、まだ少しだけぎこちなく返す。

　朝の白い眩さの中で、ささやかに、私たちの笑みがかち合う。

　笑みの余韻を表情に残したまま、私はダイニングテーブルへと向かう。

　如月くんが朝食の支度をしてくれている間に、使い捨てのウェットタオルでテーブルを拭いて、お皿やフォークを用意する。