キスは契約違反です!! ~年下御曹司と期間限定ルームシェア~
昨日と同じ服で出社した。
私の異変に、気づくひとは気づく。そして、何らかの推測を巡らせるだろう。
彼が――如月壮矢くんが、気づく側のひとであることはわかっていた。
おはよう、とできる限りいつものトーンで挨拶をした。デスクでノートパソコンに向かっていた如月くんは、私を振り返って、
「……先輩、何かありました?」
戸惑った表情で尋ねてくる。
「何もないよ」
と、笑った。それで、話を終わらせようとした。
だけど、
「嘘。泣いた目をしてる」
デスクから立ち上がった如月くんが、私の表情を覗き込んだ。
間近に絡んだ視線に息を呑めば、如月くんがふっと目を逸らす。
如月くんの視線は、私の右手へと移動した。――如月くんは、もうすべてを理解しただろう。
彼がくちびるをひらく、その寸前に踵を返した。
「すぐミーティングだから、行くね」
ひらひらと、後ろ手に手を振って、ワンフロア上の設計部門へ向かう。
同じ営業部門の翔太も、そろそろ出社してくるだろう。
翔太は、何度言っても、ギリギリに家を出る癖が直らなかったから。