キスは契約違反です!! ~年下御曹司と期間限定ルームシェア~
軽い頭痛とともに目を覚ました。うっすらとひらいた瞼、まだ曖昧な眼差しの先に、右の手の甲をかざしてみた。カーテン越しに差し込む淡い光、それに縁取られる薬指に、ペアリングは嵌まっていない。
――ああ、夢じゃなかったんだ。
眼前の景色に絶望して、のろく目を瞑って、くちびるを噛む。
このまま、ふたたび世界を手離したかった。
だけど、目を瞑って、幸せだった夢に逃げても世界は変わらないから、私は力なく上体を起こす。