Happily ever after
chapter3
勢いで山崎と一夜を過ごすことになってしまったが、優子は先ほどから彼に流されっぱなしだった。
もともと彼をテキパキと動くタイプの人間だと思っていたが、どうやら認識が甘かったようだ。
山崎はあっという間に近くのシティーホテルを予約し、道中のコンビニで必要なものをあれこれ買い、いつのまにか自分の手まで握っていた。
どれもこれも自然な流れで、もはやどこから突っ込めば良いかわからない。
かくして、東急プラザの屋上で売り言葉に買い言葉で決まった一夜は、ザ・ペニンシュラ東京の一部屋で始まった。
皇居外苑を一望出来る部屋を値段もろくに見ずにさっさと予約した山崎は、金銭感覚が独身貴族を極めているのか、それとも今すぐ事に及びたいがため頭のネジが数本取れているのか。
部屋で2人きりになり目が合った瞬間、優子は正解がわかった。
おそらく、両方だ。
「片瀬さん、して欲しくないことってありますか?」
「え?」
「彼氏じゃないからキスはして欲しくないとか、キスはしても良いけど舌を入れられたくないとか、舐められるの嫌いとか。嫌な思いはさせたくないので、ご要望は先に聞いておきたいなと」
朝巻いて以降カールが緩くなってきた優子の髪を弄びながら、山崎が冷静に聞いてくる。
まるで何かのアンケートかのようなテンションで話すため、優子もつられて雑談のようなノリで答えた。
「正直そんなに好き嫌い無いんですよね……強いて言えば、髪の毛を強く引っ張られたり噛みつかれるのは嫌かも。あ、あと気分が乗っていない時に舐めるのを強要されたら冷めます」
「なるほど。じゃあ俺が好き勝手しても大丈夫そうですね」
髪の毛を触っていた右手の指の腹が、首筋を掠める。
その優しくも官能的な手つきに、一瞬声が出そうになった。
山崎の大きな手が後頭部を包み込むのと同時に、彼の端正な造りの顔が近づいて来た。
咄嗟に目をつぶると、想定以上に柔らかく滑らかな唇の感触が伝わってくる。
味わうようにゆっくりと啄まれているうちに心拍数が早くなっていき、優子は浅い呼吸から逃れようとし、つい唇を緩めた。
その瞬間を見逃すことなく、山崎の舌が侵入してくる。
舌全体だけではなく歯の裏や口蓋まで愛撫され、未知の感覚に優子はただ体を震わせ、くぐもった喘ぎ声をもらした。