Happily ever after

優子の最寄駅である千川駅からまあまあ近いという理由で、二人は池袋でランチをすることになった。

何か肉が食べたいと健吾がリクエストすると、優子はいくつか候補があるようで、悩むそぶりを見せた。
眉根を寄せて真剣に考え事をしている表情が無駄に凛々しくて、健吾は意識して優子から目を逸らしていた。
うっかり見たら、吹き出しそうになるのだ。


「肉、肉ねえ……私一人なら三浦のハンバーグ一択だけど、健吾さんと行くならウチョウテンも……宮崎亭のランチも捨てがたいし……いっそシュラスコ?いやいや、いくらなんでもそれは贅沢すぎ。やっぱハンバーグかなあ」

「優子さん、シュラスコってなあに?」


優子の独り言の中に耳馴染みのない言葉が混じっていたため、条件反射で健吾は尋ねた。


「あ、ご存知無い?シュラスコはですね、でっかい肉の塊を串に刺して岩塩で味付けして焼くブラジルのバーベキュー料理です。牛肉がメインになりがちですね」

「へえ、聞いた感じめちゃくちゃがっつり系だなあ。俺、それ気になるので行ってみたいです!」

「ランチにしてはお高いですよ?」


恐る恐るといった風に囁く優子を見て、健吾は首を傾げた。


「高いってどれくらい?1人1万くらい?」

「そんなにしません!!だいたい1人5000円ほどですが、ランチなら3980円です!!」

「なんだ、それくらいか。じゃあ行こう!シュラスコ、食べてみたい!」


ひいっと優子は声にならない悲鳴をあげた。
昨日一晩で、健吾は一体いくら使ったと思っているのだろう。

プレゼントしてくれたワンピースはどれも2万近い代物だった。
それを3着も買った上、ディナーで2万、ホテル代に11万。
いくら稼いでいるとはいえ、こうも豪快だと不安しか感じない。


「健吾さん、付き合ってもいない女にお金使いすぎでは?」

「そう?俺は、付き合う前にカッコつけられない男ってダサいと思うよ。どうせ恋人になれば、それも付き合いが深くなれば、どんな男もカッコつけたりしなくなる。でも付き合えるかどうかわからない最初って、めちゃくちゃカッコつけて必死にアピールするじゃん。なんにも頑張らない状態って、綺麗な言い方をすれば自然体でいるって表現になる。でもそれって、聞こえは良いけど、好きな人を手に入れる為の努力をサボっているように見えるんだよね」


首都高の出口が見えてきたが、にわかに道路が混み始めてきた。
渋滞になりそうな気配を感じたが、健吾は〝優子とじっくり話す時間が出来た〟と思うことにした。

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