おやすみなさい、いい夢を。
「……それでも、日向さん、は……欠点なんてないように、見えます」
声に出した瞬間、顔が一気に熱くなった。
(な、なに言ってるの私……!)
横でハンドルを握る彼が、一瞬だけわずかに肩を揺らした。
そして、フロントガラス越しに視線を逸らしながら、低く笑う。
「……そう見えるなら、君の目が曇ってるだけだ」
その声は冗談めかしているようで、けれど苦味がにじんでいた。
笑っているのに、どこか寂しそうで。
私は胸がぎゅっと詰まって、言葉を返せなかった。
車内には再び雨音とスピーカーから流れ出るピアノの音だけが残り、鼓動の音がやけに大きく響いていた。