おやすみなさい、いい夢を。
間話 A dream.
ある夜、夢を見た。
桜と2人で同じ大学に通っている夢。
白いキャンパス。
緑の芝生。
日差しがやわらかくて、風が心地よくて。
桜は少し大人びた服を着て、
笑いながら隣を歩いていた。
「ほら、遅刻するよ」
そう言って桜が私の腕を引く。
あの頃と同じ笑い声なのに、
どこか違って聞こえた。
……それは、彼女の隣に
日向先生がいたから。
桜が彼の方を見上げて笑うたび、
胸の奥が少しだけ、チクリと痛む。
まるで桜を取られたみたいで、
ほんの少しだけ、寂しくて。
でも、
桜が幸せそうなら、それでいい。
そう思える自分も確かにいて、
そのことにほっとする。
夢の中の私は、
2人の後ろ姿を見送りながら、
風に吹かれて目を細めた。
光がまぶしかった。
空は、どこまでも青かった。
……でも、
夢に過ぎないことは、
一番、私が分かっていた。