おやすみなさい、いい夢を。

終焉 Sakura Side.



日常というものは、ある日、突然終わる。
予兆なんてものは、何もなかった。

その前の日も、いつもと同じだった。
放課後の病院。
少しだけ本の話をして、
理緒の手を握って、「またね」と言って帰った。

いつも通りの帰り道。
凍てつく木枯らしに身を震わせながら歩きつつも、
どこにも“終わり”の気配なんてなかった。

……翌日、終業のホームルームで。
担任の先生が、静かに告げた。

「宮崎さんが亡くなられたそうです」

教室の空気が止まった。
誰かが小さく息をのむ音が聞こえた。

あぁ、終わったんだ。

今日から、私は病室に行かなくていいんだ。
放課後のあの時間も、もう必要ないんだ。
……もしかしたら日向さんとも、もう会うことはないのかもしれない。

そう思った瞬間、
胸の奥が真っ白になった。

悲しいとか、寂しいとか、そんな感情よりも先に、
“日常の一部が突然消えた”という実感だけがあった。

ただそれだけ。
静かで、やけに冷たい終わりだった。



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