執拗に愛されて、愛して
「割り切ってるとかもうそういうのはわかんないけど、恋人だからって何でも話せるわけじゃないじゃない?」


 そう言うと雅はこいつ何を今更言ってんのと言いたげな顔でこちらを見ていた。少し口を開けて怪訝な顔をしているだけでも整った顔面は本当強いなと感心してしまう。どうしてこの男ブサイクな瞬間が一瞬たりともないのか、教えてほしい。


「なら早くいつも通りに戻れよ。気になんだろーが。」


 そう言いながら額を弾かれ、結構な強さで痛みを感じた。額を抑えていると、雅はふっと軽く笑みを零している。

 こんな特別でも何でもない笑顔にときめいてしまうあたり、本当に手遅れなのかもしれない。きっと顔が好きなだけじゃなくて、雅の事好きになってしまったんだ。

 最低最悪クズ野郎なんて思いながらも、どこかで私を特別扱いして、好きだと言ってくるこの男への気持ちを思い出してしまった。こんな気持ち、ずっと奥底に眠らせていたのに。

 顔だけじゃない。どこかずるくて、いつも笑わせてくれて、一緒に居たらなぜか安心出来る所。悔しいけどすごく好き。


「帰んの面倒だな。風呂借りて泊まって行って良い?」

「最初からその気だったくせに。白々しい。」

「それはそう。だけど、今日の夏帆は何か一緒に居てほしそうな顔してるから。」

「そんな顔してない!」

「はいはい。いつになったら傍に居てくらい素直に言えるんだか。」

 
 まだ何も言っていないのに勝手に気持ちを察してくこの男に腹が立つのに、嫌じゃない。
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