執拗に愛されて、愛して
 翌朝、自分のスマートフォンから着信メロディーが鳴って、その音で目を覚ました。寝ぼけながら音の鳴っている物を手探りで探して、掴むと手繰り寄せる。

 開ききっていない目で画面を見て電話の相手を確認すると、会社の人からの電話だった。会社の人だと知ると、電話に出ない訳にはいかず、通話ボタンをスライドさせる。


「…はい、朝比奈です。」

『あ、朝比奈、朝からごめん。佐久間《さくま》なんだけど。』


 佐久間とは同期入社の男、営業部である佐久間 海《かい》。成績が優秀で、営業部の頼れるエースだ。こんな日曜日の朝から電話が来るなんて珍しい。


「おはよう、佐久間くん。どうかした?」

『実は、明日の朝比奈も含めた取引先との打ち合わせが、急遽今日にどうにかならないかって言われて…。急だし朝比奈も困るだろうから、これから俺だけで対応に行って来ようと思うんだけどそれでもいいか確認したくて電話した。』


 明日の打ち合わせ…。広報でも取り扱うのに重要な打ち合わせだ。お気遣いは凄く有難いけど、大事な仕事だから自分でも話を聞き洩らしたくないし、質問事項なども話を聞いている内に出てくるかもしれないから、直接話を聞いておきたい。

 うちの会社は土日休みだけど、業務が平日で間に合わなかったり、今回みたいに休日だけど取引先がこの日に打ち合わせをしたいと言った相談があった場合、休日出勤にして対応する事もある。


「何時からなの?時間貰えれば私も向かうよ。」


 そう言いながらベッドから出ようとすると隣で起きて聞いていた雅がちょっかいを出してくる。今はそれどころじゃないと言うのに悪戯が止まらないから「ちょっと!」と怒って手を叩いた。
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