執拗に愛されて、愛して
 顔ばかり見惚れていると誤った感情に行きつきそうなので、カクテルの方に視線を移してあまり見ないようにした。


「次の日休みとかの時にまた来ようかな。」


 そう言ってグラスを掴んで、口に持っていく。

 私の方を雅くんは見ていて、煙草を蒸かすと「てか連絡先変えた?」と問いかけてきた。


「変わってない。ちなみに雅くんの連絡先も一応まだ残ってる。」

「残してたん意外。てか、くん付けとか、何か気持ち悪いな。」

「大学時代から別に変わってないでしょ。」

「呼び捨てでいいよ。久々に聞いたら何か慣れないから。」

「…分かった。」


 別に呼び方にこちらはこだわりないので、その要望に応じた。大学時代はずっと雅くんと呼んでいたのに、慣れないのはなぜだかわからないけれど。

 連絡先は別れてから連絡する勇気が無かっただけで、まだ残していた。前は未練が残っていたのもあって、何度か連絡してみようかなんて思ったりもしたのだけど…、別れ方があまり良いものではなかったから、連絡する勇気はなかった。

 そもそも別れたいと言った私がどんな顔をして連絡すればいいのかとは思ったし、それに過去あんなに好きだったから、連絡して今恋人がいるからとか、そんなの聞きたくなかった。

 今は当然、そんな未練はとっくに無い。というか、再会してから、完全に無くなった。


「残されてたんなら、連絡すればよかった。てっきり消してると思ってたし。」


 そう言いながらスマホを軽くスワイプさせている。

 その言い方じゃ、雅も私に未練があったって思ってしまうけど…、なんて考えながら雅を見ていると目が合う。


「何、見惚れてた?」


 そう言って笑みを零す雅に、考えていた事を気付かれたくなくて「今も顔だけは100点だなと思って。」と返事をした。実際、雅の顔はずっとドストライクだから、何だか悔しい。

 別れたからって顔は嫌いになれるわけないし、性格がクズだと知っても顔が格好良いのは変わらない。
 性格が嫌いになったら一気に不細工に見える目が欲しいが、そんなものは存在しない。


「玲の顔とどっちが好き?」


 答えにくい質問に思わず眉間に皺を寄せた。こんな事答えたくも無いし、聞いてどうするのか。
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