執拗に愛されて、愛して
「てか本気で綺麗になっててちょっと吃驚してる。あの頃は可愛さの方が強かったのに。」


 その言葉で腕時計から雅に視線を移すと、目が合って優しく微笑まれる。もしかして口説かれてる?なんて、思ったけれど誰にでも言っている言葉だと思い、私も笑顔を返した。


「誰にでも言ってるセリフでときめく安い女じゃないの。」

「お前にしか言ってないよ。」

「吐くならマシな嘘吐いて。くだらない。」

「そもそも俺等が別れたのって遠距離だったからじゃん。今、距離的な問題解消されたし縒り戻さない?」


 雅の発言には心底呆れた。元カノにも手が早いなんて。

 先程までお店に通ってくれているお客様とキスしていた男と縒りなんて戻したいわけが無い。そんなに軽い女として見られているのも正直腹立たしい。


「今のあんたはお断り。」

「そう。簡単に落とせないってわかった方が燃える。」

「今のあんたには落ちない自信しかない。」


 どうせ冗談だと思い「ね、カルーアミルク飲みたい」と、お酒の注文をして話を流した。この男の言葉を本気に取ってはいけない。

 それに先程恋愛をしたくないと言葉にしたばかりだし、今もその気持ちは変わっていない。相手が元々好きだった人でも、顔がタイプでも。


「俺にも酒奢ってくんね?喉乾いた。」

「はあ?図々しいわね。自分のお金で飲めば?」

「良いじゃん、再会したお祝い。さっきのオレンジカクテルは俺の奢りにしとくから。」

「仕方ないな。好きなの頼みなさい。」

「流石夏帆。」


 嬉しそうに笑うと自分の分のお酒を作りだす。流されたけれど、雅を見ている内にふと冷静になった。


 …本当にここ、ホストクラブじゃなかったわよね?
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