執拗に愛されて、愛して
 数週間後、キャリーケースを持って新幹線の駅のホームに居た。

 今日はいよいよ向こうの支社がある土地に行ってしまう日で、雅が見送りに来てくれた。だけど特に何も話さず2人で座って待っている。

 ずっと今日が来なければいいと願っていたけど、私が転勤を決めた以上願っても叶うものではなく、自分で決めたのに凄く寂しくて、別れ際何を話しても泣きそうになるのだ。

 これから前回は耐えられなかった遠距離恋愛が始まる。今度は雅の方から振られてしまうのではないか、とか、考えても仕方ない事を考えて勝手に不安になって、今この瞬間もやっぱりここに残りたいと言ってしまいそうになる。


「おい、なんつー顔してんだよ、置いてく方が。」


 雅の呆れた声を聞きながら、私は線路の方をずっと見ていた。今は雅の顔すらもまともに見られない。


「意外と寂しいなって思ってただけ。」

「…すぐまた会えるよ、そんな離れてるわけでもないし。」


 そう言って私の頭を優しく撫でる。新幹線で2時間の距離、は確かに会えないことは無い。日帰りでも十分に会いに行ける距離だ。

 今までは一緒に住んでいたから会おうとせずとも会えていたのに、そんな当たり前が崩れて、今度は会おうとしなければ会えない距離になるのが凄く嫌だった。

 雅は、この状況をそこまで悲観的にとらえておらず、私を慰めてくれている。
< 167 / 331 >

この作品をシェア

pagetop